2016年9月10日土曜日

JJのメッセージ 1

 ライサンダーは、自分は馬鹿だと思っていた。最先端の武器を持つ管理局の連中に闘いを挑んだ挙げ句、川に落ちて流された。追いかけて川に飛び込んだJJに助けられ、なんとか岸辺に這い上がってすぐ気絶した。
 目が覚めた時、彼は知らない部屋のベッドに寝かされていて、そばにJJが付き添っていた。彼は頭を動かして、場所の確認をしようとした。低い天井に薄暗い電灯が据え付けられ、片隅でエアコンが作動中だ。広さは山の家の彼の寝室より狭く、JJはどこで寝ているのかと思ったほどだ。高い位置にある窓は小さくて明かり取りでしかない。
彼は思わずJJに尋ねた。

「ここは牢獄?」

 JJは首をかしげただけだった。
ライサンダーは上体を起こした。左脚に添え木が為されていて、包帯で巻いて固定してある。脚を折ったらしい。しかし、動かしてみると、痛みはなく、彼はベッドから下りた。
JJと筆談する用具が何もない。
仕方がないので、JJに手話を使って欲しいと頼んだ。。
ライサンダーは、教わったことがなかったが、テレビで見た記憶はあったので、山の家に居た時にJJに手話を教えた。単語を示すジェスチャーではなく、指文字だ。時間がかかるが、それしか知識がなかった。

おじいさんのいえ

と彼女が手話で言った。
どこのお爺さんなのか、当然彼女は知らない。

あなたは3日ねていた

3日間も! ライサンダーは仰天した。そんなに長く気を失っていたのか?
では、父親はどうしたのだろう? 管理局がライサンダーとJJを追ってきたのだから、ダリルは・・・

そう言えば、スキンヘッドが親父を捕まえたと言っていやがった・・・

ダリルは遠い東海岸のドームに送られてしまったのだろうか。
ライサンダーは心細くなった。父親と離れて暮らした経験がない。2日3日の留守番をしたことはあっても、長期、それとも永久に離れて暮らすなど、想像出来ない。

親父は俺がいなきゃ駄目なんだ。

ライサンダーは立ち上がった。脚が折れたのだから歩けないかと思ったが、普通に歩けた。彼は、包帯を外し、添え木を外し、傷があるはずの部分を手で触れてみた。
どこも痛くない。治ったのだろうか?
 その時、ドアをノックする音がした。
2人が振り向くと、ドアが開き、かなり高齢の男と30代半ばの男が入って来た。
JJがライサンダーに紹介した。

おじいさんとジェリー