2016年9月30日金曜日

出張所 2

 クロエルはまだ仕事から解放されない部下たちに、「ちょっくら飯食いに行ってくる。」と声を掛けた。部下達は、他所の班のチーフが自分達の仕事ぶりを監視せずに出かけるのを密かに歓迎したので、めいめいが頷いて承諾を示した。
 チームリーダーだけが出張所の出口まで見送りに来た。

「この街は初めてでしょう? 店はわかりますか?」
「僕はわかんないけど、セイヤーズが頭の中に地図を持ってるよ。」

話を降られてダリルは自信なさそうに言った。

「18年前の地図ならあるけどね・・・街の様相が変わってなけりゃ良いけど。」

チームリーダーが笑顔を見せた。

「貴方は18年前と全然変わってませんよ。また一緒に仕事が出来て嬉しいです。」
「私もだよ。」

 彼はダリルと軽くハグを交わしてから、クロエルに南へ2ブロック先に行った所にお薦めのケイジャン料理の店がありますと告げた。クロエルは1時間ほどで戻るから、と言った。
 通りを歩いている間、ライサンダーは通行人の目が気になった。自分たちは、可笑しな4人組に見えるだろう。ど派手な格好のドレッドヘアの中米系の兄ちゃんと、明らかに遺伝子管理局のダークスーツを着た男と、埃まみれの少年少女だ。彼は父親に尋ねた。

「父さん、この後はどうするの?」

 ダリルは当然の如く答えた。

「ポールをドームに送り返す。ジェリー・パーカーも恐らく一緒だ。JJも行きたがっている。」
「そうじゃなくて、父さんはどうするの? ドームに戻るの?」

 ダリルはクロエルをちらりと見た。クロエルはJJと端末を通してお話中だ。

「ラムゼイ博士がまだ逃走中だから、捕まえなきゃいけない。恐らくこの街のどこかに潜伏しているはずだから、明日から捜索に入る。」
「俺が聞きたいのはそんなんじゃなくて・・・」
「今夜は近くのホテルに部屋を取ろう。同じ部屋でいいだろう?」

ライサンダーが不満顔をすると、ダリルは優しく言った。

「今夜、その話をするから。」