2016年9月1日木曜日

捕獲作戦 7

「ドームの外で食っていくには、金が要る。レインなら昔の馴染みで金になる仕事をくれるかと期待した。だが、あんたが割り込んできたんじゃ、話にならない。」
「待て!」

 ダリルがドアノブを掴んだので、ハリスは自分の電話を出して、待機させてあった保安要員へ呼びかけた。

「脱走者だ、確保しろ!」

ところが、電話から聞こえて来た保安要員は、意外な返事をした。

「え? もう撤収しましたよ。今日の任務は終わったと聞いたもんで・・・」

その声はダリルにも聞こえたので、彼は足を止めてハリスを振り返った。
ハリスが驚いて電話に怒鳴った。

「誰がそんなことを言ったんだ?!」
「本部の局員ですよ。」

ハリスはぽかんと口を開けた。
ダリルは、ポールが助けてくれたのだと直感した。ポール・レインはこのホテルのどこかにいるのだ。 彼がチャンスをくれたのであれば、遠慮無く逃げよう。
ダリルは、馬鹿みたいに床に座り込んだままの支局長に「ごきげんよう」と言って、部屋を出た。

 ダリルがホテルの建物から出て駐車している車までたどり着いた時、ポケットの電話に着信があった。出ると、ポールの声が聞こえてきた。

「やぁ、ダリル、相変わらず元気が良いね、君は。」

 ダリルはホテルを振り返った。3415号室の窓に人影が見えた。電話を持っている。

「何もかもお見通しって訳だな、ポール?」

 ダリルは腹が立ってきた。ポールはハリスが罠を張ったことを知っていた。知っていて、近くでダリルの手並みを見物していたのだ。そうだ、ルームサービスで夕食を取りながら・・・。

「俺がチェックインする直前にハリスが俺の名前を使って部屋を取ったんだ。ホテルのスタッフは俺と馴染みだから、ヤツが保安要員まで連れてきたことを教えてくれた。
俺は君が来たら俺の部屋に来るように伝えてくれ、とホテル側に頼んでおいたのだが、運悪く君はバイトのクラークに当たってしまった。仕方がないので、保安要員を遠ざけることにしたんだ。支局長の方は君がうまくあしらってくれるだろうから。」

そして、彼は尋ねた。

「4Xを見つけたんだろ?」
「さあね。」

ダリルは意地悪く言って、電話を切った。