2016年9月19日月曜日

牛の村 8

 ポール・レイン・ドーマーが捕まったと聞いて、JJは失望した様な表情になった。
タブレットに文章を書いた。

ーー私が管理局を呼んだりしたから、犠牲になる人が出た。

「そんな訳ないよ。」

 ライサンダーはポールの衰弱振りがずっと気になっていた。メーカーたちから暴行を受けた形跡はなかった。ラムゼイ博士とジェリーは、誰であれ管理局の人間を捕らえる時は怪我をさせるなと部下たちに言いつけてあった。ドーマーは細菌感染に弱い。地球人が普通持っている抗体が出来ていないからだ。あの弱り方は何が原因なのだろう。

「JJ、君は『氷の刃』の塩基配列を見たことがある?」

ーー彼が連行されて来た時、廊下でチラッと見た。

「どこか、俺たちと違うところがあった? つまり・・・健康に関係するところとか?」

ーーないと思う。あの人の体は完璧。

 では、心的なストレスか? 管理局の偉いさんが、そんな柔なヤツなのか?
JJがライサンダーに寄り添ってきた。

ーー彼のことが心配?

 ライサンダーはよくわからない。父親を奪った憎い男だが、アイツも父親なのだ。
彼は思いきって彼女に告白した。

「『氷の刃』は俺の、もう1人の親なんだ。」

JJが目を見張った。じっと彼を見つめ、考え、そして、頷いた。

ーー目元が似ている。