2016年11月6日日曜日

対面 11

 遺伝子管理局は貸金庫の存在を知った方法も理由も明かさなかったので、モスコヴィッツとビューフォードは相手がばらしたのかとお互い疑心暗鬼に囚われたことだろう。
 夕方ドームに帰投した北米南部班第1チームに、入場管理官達が「珍しいね」と驚いた。抗原注射の効力はまだもう1日あるのに、泊まらずに帰ってくるのはもっと近場の勤務の時のはずだが。
 本部に入って、全員ですぐ報告書を作成した。出来れば仕事を残さずに夕食の席に着きたかったのだ。ポール・レイン・ドーマーは、モスコヴィッツに関する捜査を詳細に書いたが、フラネリー家に関しては簡潔に「メーカーとは無関係」と書いたに過ぎなかった。
ダリルも大統領がドームでの女子誕生の研究の進行具合を尋ねたとだけ書いた。
 夕食はチーム全員で一般食堂で取った。執政官に邪魔されずに済むのは良いことだ。
ポールのファンクラブは彼が明日にならなければ帰投しないと思っているので、現れなかった。

「明日はどこを捜査します? 支局巡りの番は来週なので、明日は空いてしまいますが?」

 時間が空いたら遊ぶと言う発想がドーマーにはない。明確に上司から「休暇」を与えられなければ仕事をするだけだ。ダリルは息子を探しに行きたいと思ったが、内勤の秘書なので、予定外の外出は許可されない。
 ポールはハイネ局長に「明日の予定」と題名だけのメールを送った。指示をよこせと催促したのだ。
 返信は、みんなが食事を終える頃に来た。
 メールを開いたポールが、思わず声を上げた。

「うわぁ! マジか? 」
「どうした?」

 彼は端末の画面を仲間に見せた。 ドーマー達は全員、青ざめた。

ーーチーフ、秘書 及び第1チーム全員、中央研究所に午前10時に出頭

何を意味しているのか、彼等は知っていた。
誰かが情けない声で呟いた。

「どうせ、ドーマーは種馬だもんなぁ・・・」