2016年11月8日火曜日

対面 16

 ジェリー・パーカーはジムでドーマー達と格闘技の練習や筋肉トレーニングをした。水泳も出来ると聞いたが、それは遠慮した。彼は泳いだことがなかった。
 彼の目から見ると、ドーマー達は遊んでいる様に思えたが、彼等は勤務日なので外に出る日に備えて体力作りをしている、正式な仕事の一部だった。だから、手抜きはしない。
ジェリーは投げられ、床に押さえつけられ、殴られ、そして同じことをドーマーに対して行ったが、誰からも咎められることはなかった。
 休憩時間になると、ポール・レイン・ドーマーが部下達の成績をチェックした。先日ドーム追放になったアレクサンドル・キエフ・ドーマーの穴を埋めるために保安課から異動になったドーマーが、抜群の身体能力を見せて、「流石に保安課だ」と賞賛を浴びた。

「セイヤーズもかなりのもんじゃないか?」

とジェリーが感想を言うと、ポールはふんっと笑った。

「セイヤーズは筋肉ではなく、脳で闘っているんだ。対戦相手の筋肉の反応を瞬時に分析しているんだよ。だから動きが速い。相手が次にどの方向へ動くか見抜くからだ。」
「へぇ・・・」

よくわからないが、ジェリーは自身の「贔屓のドーマー」が優秀だと言われて少し嬉しかった。

「君も良い筋肉しているなぁ」

とクラウスが声を掛けてきた。ジェリーはポールを見て、ちょっと意地悪く言った。

「牛追いで鍛えたからな。」

 ポールはまたふんっと言った。ジェリーがダリルを意識していることを感じていた。否、彼は知っていた。捕虜になっていた時、ジェリーに触れられて知ったのだ。ジェリーはドーマーの手錠の具合を確認しながら、脱走ドーマーのことを考えていた。ラムゼイ博士が「氷の刃」と脱走ドーマーを交換しろとドームに交渉してくれないかな、と考えていたのだ。
 ポールは、ダリルのパートナーとして寛大なところを見せてやった。

「パーカー、次はセイヤーズと組み合ってみるか? 此奴を掴めればの話だが。」