ハリスの身分証を紛失したことをクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーは泣きそうになって認めた。
「報告書作成の段階で紛失していることに気が付きました。ポール兄さんは医療区に入院なさった後だったし、ダリル兄さんはまだ外に居られたので、相談も出来ず、取り敢えず中西部、ローズタウン両支局に僕が忘れ物をしていないか問い合わせました。どちらからも返事は「なし」でした。
それで報告書にはハリスのID番号は記載せずに提出しました。
直ちに情報管理室にハリスのID無効通知を出し、誰かが使用すればすぐ分かるように手を打ちました。
紛失を報告するのを忘れたのも、僕の落ち度です。」
ダリルは溜息をついた。クラウスは紛失物について正しい処理をした。しかし、ドームのコンピュータは無効IDを見抜けなかった。ドームのセキュリティは不完全なのだ。
ポールは既に捜査態勢に入っていた。
「何処で紛失したと考える? 中西部支局を出る時はあったのか?」
「ありました。確認してアタッシュケースに入れました。」
「ローズタウンではどうだ?」
「あそこではケースを開いていません。」
「搭乗前の手荷物検査はしただろう?」
「しました。 ああ・・・そこで開きました。」
「検査係は、ローズタウン支局の職員だな?」
「遺伝子管理局の荷物は支局職員の担当ですから。」
「君は検査係の動きを見ていたはずだ。」
クラウスは一瞬空中に目を向けた。当時の様子を思い出そうとしたのだ。
「サーシャが話しかけてきたんです。」
ポールのストーカーをしていたドーマーだ。久し振りにその名を聞いて、ポールは不快そうな顔をした。何の話だったかは忘れた、とクラウスは言った。
「兎に角、サーシャと話していた1分ほどは、検査カウンターから視線を外したと思います。」
1分あれば、カードなど簡単にちょろまかすことが出来る。
「どの職員だったか思い出せるか?」
「申し訳ありませんが・・・」
クラウスはしょんぼりした。
「ローズタウンは第3チームの担当なので、僕は馴染みがなくて・・・」
「支局にFOKのスパイが潜り込んでいる可能性があるな。」
ダリルが弟分を慰めた。
「君のせいじゃない。一瞬の油断を突かれたんだ。悪いのは、無効処理したIDを気が付かずに通したコンピュータだ。」
「報告書作成の段階で紛失していることに気が付きました。ポール兄さんは医療区に入院なさった後だったし、ダリル兄さんはまだ外に居られたので、相談も出来ず、取り敢えず中西部、ローズタウン両支局に僕が忘れ物をしていないか問い合わせました。どちらからも返事は「なし」でした。
それで報告書にはハリスのID番号は記載せずに提出しました。
直ちに情報管理室にハリスのID無効通知を出し、誰かが使用すればすぐ分かるように手を打ちました。
紛失を報告するのを忘れたのも、僕の落ち度です。」
ダリルは溜息をついた。クラウスは紛失物について正しい処理をした。しかし、ドームのコンピュータは無効IDを見抜けなかった。ドームのセキュリティは不完全なのだ。
ポールは既に捜査態勢に入っていた。
「何処で紛失したと考える? 中西部支局を出る時はあったのか?」
「ありました。確認してアタッシュケースに入れました。」
「ローズタウンではどうだ?」
「あそこではケースを開いていません。」
「搭乗前の手荷物検査はしただろう?」
「しました。 ああ・・・そこで開きました。」
「検査係は、ローズタウン支局の職員だな?」
「遺伝子管理局の荷物は支局職員の担当ですから。」
「君は検査係の動きを見ていたはずだ。」
クラウスは一瞬空中に目を向けた。当時の様子を思い出そうとしたのだ。
「サーシャが話しかけてきたんです。」
ポールのストーカーをしていたドーマーだ。久し振りにその名を聞いて、ポールは不快そうな顔をした。何の話だったかは忘れた、とクラウスは言った。
「兎に角、サーシャと話していた1分ほどは、検査カウンターから視線を外したと思います。」
1分あれば、カードなど簡単にちょろまかすことが出来る。
「どの職員だったか思い出せるか?」
「申し訳ありませんが・・・」
クラウスはしょんぼりした。
「ローズタウンは第3チームの担当なので、僕は馴染みがなくて・・・」
「支局にFOKのスパイが潜り込んでいる可能性があるな。」
ダリルが弟分を慰めた。
「君のせいじゃない。一瞬の油断を突かれたんだ。悪いのは、無効処理したIDを気が付かずに通したコンピュータだ。」