2017年1月1日日曜日

誘拐 21

 帰りのヘリコプターの中で大統領から渡された紙を開くと、そこには20数名の氏名がリストアップされていた。モスコヴィッツ以下トーラス野生動物保護団体のメンバー5名と、上院議員3名、下院議員4名、その他の政府高官3名、財界人6名・・・。
 ダリルが尋ねた。

「FOK関係の人間か?」
「否、もっと質が悪い。」

 ポールが苦々しげに言った。

「現政府とドームに反感を抱いている連中だ。つまり・・・」

 彼はダリルを見た。

「ラムゼイを殺した連中だ。」
「大統領が調査したのか?」
「大統領と母親の2人で調べたそうだ。」

 他人の手に触れれば相手の感情や思考が読める便利な能力を持った母子だ。

「ラムゼイは遺伝子法や宇宙での法律に違反して、古代人の遺体からクローンを創り、ドームを放逐された。連中は彼がドームを憎んでいると考えた。だから彼を援助していたんだが、遺伝子管理局に彼が追い詰められると、あっさり切り捨てたんだ。
 このリストに書かれている連中は、コロニー人がドームを使って地球を支配していると思い込んでいる。何故子供を産むのにドームに行かなければならないのか、何故結婚や出産にドームの許可が必要なのか、彼等が疑問を持つのは当然だ。反感を抱いても無理はないと、俺は思う。ドームは完璧に秘密主義を貫いているからな。
 パトリック・タンの誘拐は、連中がドーマーからドームのマザーコンピュータへアクセスするパスワードを得ようと企んだものだ。ドームの宇宙技術を盗んで、対抗出来る兵器でも造ろうと思ったのだろう。マザーにはそんな情報は入っていないのにな・・・。」
「FOKはこのリストに載っている連中とは関係ないのか?」
「ダウン博士がトーラスの理事にいるだろう? ミナ・アン・ダウン教授の配偶者だ。夫妻を通して繋がっているのかも知れないし、妻が夫を利用しているのかも知れない。」
「そのリスト、どうする?」
「連邦捜査局に渡すべきか、と訊いているのか?」
「渡さないのか?」

 ポールは大きく息を吐いた。

「君には言いたくなかったのだが・・・大統領は俺の手を握って、『任せておけ』と言ったんだ。」

 ダリルは考えた。政府の最高責任者が、政府に反感を持つ人間の処遇について、「任せておけ」と言った? 

「政府が、掃除をすると言う意味か?」

 ポールは「さあね」と言った。物騒な案件について、明言を避けたのだ。ダリルにも関わるなと言いたいらしい。ポールがはっきり物を言わない時は、用心しなければならない。